そよそよ族ノート

備忘録的に観劇記録を書きます

#9射手座の行動プロデュース 行動・2 『三人のホラー ふじきホラー、鳥山ホラー、柴ホラー』 の内容と感想

観劇日 2016年7月14日(木)19:30の回

 

 

※ネタバレの羅列です

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 射手座の行動、は、ふじきみつ彦による一人演劇ユニットである。ふじきの演劇は、昨日の祝賀会という演劇ユニットではみたことはあるが、射手座の行動ははじめて。今回の企画は、ワワフラミンゴの鳥山フキ、ままごとの柴幸男と共に、ホラーの短編を上演するというもの。

 関係はないが、この日(7月14日)は激しいゲリラ豪雨と、胃の鈍い痛みに襲われながらの観劇となり、内心おだやかではなかった。

 

 雨の影響のためか、開演予定時間を少しすぎたあたりで、ゆっくり読み上げられる会場アナウンス。その後、「し〜ば〜ほ〜ら〜」(松本人志のゾッとする話風)との声がして、開演。

 

1、柴ホラー『死なない死体』(出演:北村恵・柳沢茂樹・吉田亮)

 男がテーブルの上に、仰向けの状態で寝ている(倒れている)。腹には包丁がささり、血が服に染み出している。部屋に女が入ってきて、倒れている男に文句を言う。「なんでいんの」とか、「出てけよ」とかなんとか。女と男はかつて付き合っていた仲のようだが、女が男を刺したことで、そして、男が死んでしまったことで、その仲は解消されているようだ(少なくとも女にとっては)。死んだ男は、「動けないから出ていけない」「努力しても無理」というようなことを言う。また、へらへらとしている(情けなくて少し気持ちが悪い)。女は自分の歯をハブラシで磨きながら、ずっと迷惑そうにしている。

 男の死体を片付けるためにはまず解体しなけりゃという話の運びになり、女は、男のかつての友人を呼び出す。「久しぶり」と会話する男の死体と友人。しかし態度の悪い女に、しだいに友人は腹を立て始める。死んでいる男に言う。「あんなやつ別れた方がいいって!」そして男に悪影響であると判断したのか、友人は女を殺害し、その死体を仰向けの状態で床に転がす。「殺してんじゃねーよ!」と女。

 悪態をつく女に、死体の先輩である男は、「だんだんなにもかもどうでもよくなってくるから大丈夫」というようなアドバイスをする。女は、どうでもよくなることにイライラと抵抗する(その中で「生きたい」とさりげなくぼやく)。しかし、女もだんだんなにもかもどうでもよくなり、「生きとし生けるものが愛しく」思えてくる。

 (長々と内容を書いてしまったが、近々「戯曲公開プロジェクト」の一環で、戯曲全体が公開される予定のようだ。詳しくはそちらを参照するのが一番である)

 

 

  タイトルからして、あははという感じである。劇作家の別役実はかつて、コントの基本は死体からのようなことを言っていて(手元に本がなく、きちんと引用はできないが、『別役実のコント教室—不条理な笑いへのレッスン』では死体からはじめるコントの書き方を指南していた)、本作は基本をおさえた優等生作なのだろうなという印象。ツッコミ不在でぐるぐるまわる会話と、独特な死の軽さ。ただ、死者を冒涜しているわけではなく、死者を生者の延長の、「生者とは少し違うモノ」として捉えているような感覚。

 死ぬと、「いろんなことがどうでもよくなる」らしいので、反対に、「いろんなことがどうでもよくなった」状態は死んでいるのと変わらないのかもしれない。また、「いろんなことがどうでもよくない」状態こそが生きているということなのかもしれない。

 しかし、ここにいる登場人物たちは人を殺す動機に対しては敏感だが、殺すこと自体には「どうでもよさ」を感じているようにみえる。執着が偏向的なのである。不条理に生きる彼らは生きているようでも死んでいるようでもある。

 わざと繰り広げられる日常会話はあまり好きになれず。しかし、このほんわか死生観は魅力的。死んだら何もかも愛しくなるのかーと浸りたい気もするが、同時に恐ろしさも覚える。いろんなことがどうでもよくなったらおしまいだ。

 

 

2、柴ホラー『おばけ指南』(出演:有吉宣人・名児耶ゆり・濱野ゆき子)

 閉園後の遊園地、おばけ屋敷の中で、お化け役の二人が人をおどかす練習をしている。一人は、ベテランお化け役の女。もう一人は、新人バイトの男。二人とも白装束をきている。先輩お化けは、貞子風に長い髪を前に垂らしていて、始終お化けのテンションである(恨みのこもったようなささやき声を出し、常に中腰)。そのテンションのまま、新人バイトにお化けの極意を教え込んでいる。熱意のある先輩お化けとは打って変わって、バイトの男はなんとなく雑に教えを受けているようである。

 バイトの予行演習として、バイト男が先輩お化けを驚かそうとする。しかし先輩のいるはずの場所に現れたのは、見ず知らずの女だった。その女は、先輩お化けに元彼を殺されたと言い張る。そして、「あなたも殺されるわ」と男に伝える。元彼の死因は、お化け役に徹しすぎたためだったらしい(もう少し詳細が語られていた気もするが、失念、、、)。つまり、先輩お化けに現在しごかれているバイト男も危険だというのだ。

 先輩お化けも現れ、殺してない、殺した、の言い合いが、バイト男も含め昼ドラのように行われる(BGMもそれを盛り上げる)。その言い合いの果て、女が先輩お化けを包丁で刺してしまう。バイト男に、「あなたはお化けの逸材である」ということを伝え、絶命する先輩お化け。バイト男は遺志を継ぎ、情念を燃やす。そして、男も女も立ち去った後、先輩お化けの死体が動きだす。自分を刺した包丁を持って、幽霊のようにさまよいはじめる……。

 

 

 『死なない死体』をみた直後であったためか、最初からお化け役の二人が死人だと思って観てしまい、勝手に混乱してしまった。しかし、恋人を殺された女も、幽霊の様に登場したり、もちろん先輩お化けは常に幽霊っぽいし、あれ、この人も幽霊……じゃなかった!という予感に揺さぶられる体験ができたので、それはそれで良かったのではと思う(ホラーにおいて予感は大事)。最後のシーンで、幽霊の誕生をみるわけだが、あれ、これは、本物……(演劇だけど)というヒヤッとした静けさが楽しい。

 名児耶ゆり(恋人を殺された女役)は出てくるだけで非常に強烈なインパクトを残していく女優だなと思う。

 

 

3、鳥山ホラー『スプリングス(ピーク)』(出演:有吉宣人・島田桃依・濱野ゆき子・吉田亮)

 何を言っているのかわからない小汚い老人と連れ立って現れる女。老人は何かを言い残し、女は、「はいはい」といったような対応で老人が去るのを見送る。女は彼氏らしき人物とその場で落ち合い、会話をしようとしている。彼氏は一向に何も話さない。また、何もしようとはしない、無気力そうな様子がうかがえる。女は一人ではしゃいでずっと彼氏に話しかける。やがて彼氏が小箱を取り出し、女の方に向ける。「くれるの?」といって、女は受け取るが、その瞬間彼氏は箱を奪い取り、捨てる。これが何度か繰り返される。春一番のような風が吹き抜ける。そして、紙袋をかぶり、オノを持った男が現れ、襲い掛かってくる。彼氏は殺される。その後女が攻防を繰り広げる中、雷に打たれてオノ男が倒れる。女が生き残る。BGMはサスペリア

 

 

 断トツに意味がわからなかった鳥山ホラー。この風が吹く一帯には、何か「そうなる」磁場のようなものが働いていて、「そうなる」ことはこの場にとってあたかも自然である、というような見えない縛りを感じる。

 何も話さない彼氏も、それに話しかけ続ける女も狂気じみていて怖いし、オノを持った人物なんてわかりやすくホラーだ(サスペリアのBGMだって)。しかし、この作品の怖さはそのような明確な対象にあるのではなく、怖い対象が移り変わっていく不安定さや、見えない法則のある「この場所……やばい」感にある(霊感がなくともわかる)。理解できない演劇はいくつかみたことがある気がするが、理解できそうもないなと諦めさせるロジックがはたらいているものはほとんどはじめて(一回だけ観たことのある野鳩、は近いかもしれない)。しかもそのロジックに従順に従っている人間をみると、洗脳された人間をみているような生々しい感覚の怖さがある。次の作品もこの『スプリングス(ピーク)』の世界観を引き継ぐ。『スプリングス(ブリッジ)』には、ピーク版よりかなり長い上演時間が割かれる。

 

 

4、『スプリングス(ブリッジ)』(出演:北村恵・多賀麻美・名児耶ゆり・原口茜・柳沢茂樹)

 ブリッジ版では、女二人がその「やばい場所」に旅行しにきた場面からはじまる。女二人の会話は唐突でロボット的な感情のこもらない棒読みであある。なおかつ、物腰は丁寧である。

 詳細を追えない情報量だったために、覚えているブリッジ版の要素を書き連ねようと思う。

・二度ほど老人が出てきて(全て違う役者がやる、殺された人物がこの役を担う?)、「そっちいっちゃなんねえ!」とその「場」にいる人物に伝える。「こっちこい!」と言って幕間に消える。

・女二人が、「手を切られる夢」について話す。

・「ピータンさん」という人(?)物からの手紙を受け取っている人物が複数いる。

・「ピータンさん」からの手紙は白紙であり、それは、手を切られたから文字がかけないためらしい。

・幽霊的な何かに腕をひっぱられ、手を切られそうになった女がいる。もちろん嫌がってふりほどくが、その窮地を脱した後は、むしろ手を切ってほしそう。

・会話にたびたび「うさぎ」というキーワードが登場する。

・完全に人間の形をした、何を考えているかわからないロボットが出てくる。

 ……などなどの要素が繰り広げられ、最終的には、老人が去った方向からカップルのような男女が登場、無表情のまま「あははははははは」と笑い声をあげ、一人の女を隅においつめる。

 

 

 (ラストまた雷が落ちたのだっけか、間をおいて書くと本当に記憶中枢が危ないことを感じるが、)とにかく何が起きているのか理解する隙もなく、矢継ぎ早に意味深長なワード・行動が飛び出す。「手を切る」などはそれだけでゾッとするし、ピータンさんは手がないから白紙の手紙を送ってくる、という謎理論がまかり通るのはよくわからない。「うさぎ」というアリス的単語も一体なんであるのか。グリム童話的メルヒェン世界を大人が大真面目にやるとこうも不気味なのかという感触。

 しかし始終笑える。例えば唐突に現れたロボットの存在に入れられたツッコミは、別の一人の女優の「なんだロボか……」という一言のみであったし、そもそもセリフひとつひとつの抑揚が現代口語のものではなく、テレビでよくある再現ドラマの子役が発するようなものであるし(伝わるだろうか)、とにかくおかしい。

 女優たちも、上品であり、色気があり、清楚であり、本当に魅力的にみえる。それでいて頭がおかしくもみえるのだから、すごい。怖い。

 

 

5、ふじきホラー『クリーミーマミ』(出演:有吉宣人・島田桃依・多賀麻美・濱野ゆき子・柳沢茂樹・吉田亮)

 ある夫婦の家に、双子の赤ん坊が生まれた。その双子をみに、妻の弟(無職)と、その彼女がやってきている。日常会話の中で語られるのは、最近近所で猫の首がおちていて、それにサワガニがたかっていた、という物騒な話や、以前起こった男子児童殺害の事件の話(この児童にもサワガニがたかっていた)。そして、近所に住んでいる夫婦がその男児殺害の容疑者としてあがっているというウワサ話。

 折よく、その近所に住んでいる容疑者夫婦が、双子の親夫婦のもとを訪ねてくる。出産祝いを持ってきたらしいのだが、しつこく家に上がりこもうとする。双子の父は、親戚がきていて今日は帰ってほしい、と伝えるも、「それ、嘘だよ」といって玄関から入る容疑者夫。「ほらね」と言いながら、双子の親夫婦、その弟と彼女、そして双子の赤ん坊がいるリビングへと軽々と侵入してくる。

 容疑者夫婦は出産祝いに、サワガニの唐揚げを大量に持ってくる。猫の首や男児殺害の話を聞いたその場の全員が食べたがらない。霊感があるという弟の彼女がサワガニをつまむと、吐き気を催しトイレに向かい、戻ってこない。

 唐揚げ騒動からはじまり、ギクシャクとする会話。容疑者夫婦は、帰る前に赤ん坊を抱かせてくれとせがむ。しぶる双子親夫婦だったが、それさえさせれば帰ってくれると思い、それぞれに子供を預ける。子供をあやしつつ、容疑者妻がこう言う。「ひとりくれませんか?」

 当然拒否する周囲であるが、早速双子に対して異常な愛情を向け始める容疑者夫婦。しかし、片方の子供は自分たちに似ていない、という理由で、その赤ん坊を手の中から地面へ落下させもする。そして、自分たちには子供をもらう権利があるということを主張し始める。男子児童が殺された時、嬉々としてテレビに映った双子親夫婦のせいで、容疑者に仕立てられてしまったと言うのだ。また、自分たちにも子供がいて、裁判やらなにやらやっている間に流産してしまったということも告白する。

 その後、トイレから戻ってきた霊感持ちの彼女が、子供を渡したほうがいいかもしれない、と言い出す。「私、(霊感で)見えちゃったんです、男の子を殺した犯人……」そして、彼女が指し示した人物は、双子の父であった。

 一転して男子児童殺害事件の容疑者となる双子の父。双子親家族には暗雲が立ち込める。一方、子供を手に入れた元・容疑者夫婦は幸せそうである。そして、ラスト、その元・容疑者夫婦の妻の実の妹が、霊感のある、例の彼女であったことが明かされる。全ては子供を手に入れるためのだまし討ちだったのである。

 

 

 ラスト付近はほとんど展開が読めるのではあるが、そこに至るまでの伏線の置き方が丁寧。例えば、弟が無職であり、それをいじる日常会話だって伏線ともいえる。そんな男と付き合う彼女ってどんな人なの?とふと頭に過ぎらせておくのだ。また、猫の首の写真をケータイに保存していたという双子の母のさりげない暴露も、もしかして異常者は双子一家の方なのではという予感を微量ながらもちらつかせていて、うまい。

 また、ただの人形で表された双子の赤ちゃんの行方に、本当にハラハラさせられる。昨日の祝賀会をみたときにも感じたが、漫画的でありながら「こういう人っている!」と感じさせる細かい人物描写や演出がとても丁寧。

 ただ、他にも外堀を埋めている設定なのかわからないが、霊感女の証言で容疑者が変わるということは考えられにくいことと、オチが腑に落ちるもの−−鳥山とは対照的な−−だったことが、少し物足りない気にさせる。

 ちなみに、クリーミーマミというタイトルに関しては、双子の母がクリーミーマミみたいな雰囲気、という要素としてセリフ中に出てきていたにすぎない。ただ、クリーミーマミというアニメ、私は内容を知らなかったのだが、少女が魔法で変身してアイドルになり、正体を隠しながら二重生活を送るというものらしい。なるほど……。

 役者たちは、それまでの1〜4の話でみせてきた演技とはガラッと変わったものをみせてくれていて、すさまじい。器用である。

 

 

 三者三様のホラーで、それぞれ楽しめた。そしてやはり、どんなカラーにも対応していく役者たちの変わりように驚く。

 

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射手座の行動プロデュース 行動・2 『三人のホラー ふじきホラー、鳥山ホラー、柴ホラー』

2016年7月13日(水)~18日(月・祝) 小劇場楽園

脚本:ふじきみつ彦、柴幸男、鳥山フキ

演出:ふじきみつ彦(ふじき作品・柴作品)、鳥山フキ(鳥山作品)

出演:有吉宣人、北村恵、島田桃依、多賀麻美、名児耶ゆり、濱野ゆき子、原口茜、柳沢茂樹、吉田亮